擁壁のある土地を買う前に|高低差・既存擁壁の確認点と担当者への質問例

気になる土地に擁壁(ようへき)や高低差があると、「買っても問題ないのだろうか」と迷う方は多いと思います。

結論からお伝えすると、擁壁や高低差があるという理由だけで、その土地を避ける必要はありません。ただし、販売図面と見た目だけでは判断できないことが多く、資料・現地・役所・住宅会社の確認を重ねて、判断材料をそろえる必要があります。

筆者は不動産会社で実務に携わっており、不動産取引や査定、賃貸・管理などの実務経験があります。この記事では、擁壁のある土地を検討するときに、次の4つを整理できるようにまとめました。

  1. 何が分かっているか
  2. 何がまだ分かっていないか
  3. どの資料で確認できるか
  4. 誰に確認するか

販売図面から高低差に気づくところまでは、土地の販売図面の見方|図面だけでは分からないことと担当者への質問例で解説しています。この記事はその続きとして、気づいたあとに何を確認するかを扱います。

目次

土地の高低差と擁壁で、何が変わるのか

擁壁とは、高低差のある土地で、土が崩れないように支える壁のことです。コンクリート造のものや、石を積んだものなどがあります。

高低差や擁壁は、主に次の5つに影響します。

  • 建物を敷地のどこに、どのように配置できるか
  • 駐車場や、道路から玄関までの動線
  • 造成(土地を建築できる状態に整える工事)が必要かどうか
  • 雨水の流れと排水
  • 建物の工事以外にかかる費用

高低差があること自体は、良い・悪いで決められるものではありません。大切なのは、その高低差と擁壁が、建てたい家と資金計画にどう関係するかを、購入を決める前に確認しておくことです。

まず確認したい3つの高低差

ひと口に高低差といっても、どこと比べた差なのかによって、確認することが変わります。

道路と敷地の高低差

敷地が道路より高いか低いかは、駐車場の造り方、玄関までの動線、工事車両の出入りに関係します。道路より低い土地では、雨水の流れ方も確認が必要です。

なお、前面道路の種類やセットバック(道路の幅を確保するために敷地を後退させること)については、接道と私道の確認方法|道路の種類・セットバック・持分と担当者への質問例で解説しています。

隣地と敷地の高低差

隣の土地との間に段差がある場合は、自分の敷地が上側なのか下側なのかを確認します。上側であれば自分の敷地の土を支える擁壁、下側であれば隣地の土を支える擁壁が関係します。どちらの場合も、その擁壁が誰のものなのかが重要になります。

敷地の中の高低差

敷地の中に傾斜や段差がある土地では、建物を建てる部分を平らにするために、盛土(土を盛ること)や切土(土を削ること)が必要になる場合があります。販売図面の面積がすべて同じように使えるとは限らないため、平らに使える範囲を確認します。

高低差の種類確認すること確認に使う資料主に聞く相手
道路と敷地高い・低いの別と差、駐車場と玄関までの動線、排水現況測量図、高低測量図、現地不動産会社、住宅会社
隣地と敷地上側か下側か、擁壁の位置と所有者測量図、境界の資料、現地不動産会社
敷地の中平らに使える範囲、盛土・切土の要否高低測量図、造成の計画図、現地住宅会社

高低差を測った図面がない土地もあります。その場合は、「測った数字はない」ということ自体が、まだ分かっていないことの一つです。

擁壁がある土地で確認すること

販売資料の「擁壁あり」は出発点です。確認したいのは、位置と所有者、造られた経緯、資料の有無、今の状態の4つです。

位置と、所有者・管理者

擁壁が自分の敷地の中にあるのか、隣地にあるのか、境界線をまたいでいるのかを確認します。擁壁の所有者や境界との位置関係によって、将来の補修や管理について確認すべき相手や条件が変わるためです。

擁壁の一部が境界線を越えている「越境」がある場合は、その扱いを売主側と確認しておく必要があります。境界と越境の考え方は、別の記事で扱う予定です。

高さ・構造・造られた時期

擁壁の高さ、材料や構造、いつごろ造られたものかを確認します。造られた時期が古い擁壁は、造られた当時の基準や手続きが、現在とは異なる場合があります。

ただし、古いからといって、ただちに造り直しが必要になるわけではありません。

確認できる資料があるか

擁壁が、どのような手続きを経て造られたかを示す資料があるかを確認します。たとえば次のようなものです。

  • 建築確認の確認済証・検査済証(工作物として手続きをした擁壁の場合)
  • 宅地造成や開発行為に関する許可・検査済証(造成工事の一部として造られた場合)
  • 擁壁の構造図や、工事のときの図面

資料が残っていないことは、違法や危険を意味するものではありません。手続きの対象ではなかった場合もあれば、古くて書類が残っていないだけの場合もあります。ただ、資料がなければ、安全性や建築への影響を判断する材料が足りない状態です。「追加の確認が必要な土地」として整理し、役所の記録や住宅会社の見解で補っていきます。

今の状態(現況)

現地では、ひび割れ、はらみ(壁の一部がふくらんでいる状態)、傾き、水抜き穴(擁壁の裏側の水を外へ出すための穴)の有無や詰まり、周囲の排水の様子を見ます。建築基準法施行令でも、擁壁には水抜き穴を設けることなどが技術的な基準として定められています(第142条)。

国土交通省は、住民の方がおおまかに状態を確認するための資料として「我が家の擁壁チェックシート(案)」を公開しています(国土交通省「宅地擁壁について」)。

ただし、目視は異変に気づくためのものです。ひび割れ・はらみ・傾き・排水などを見るきっかけにはなりますが、安全かどうか、そのまま使えるかどうかは、専門家による確認が必要です。

確認すること確認できる資料・方法主に聞く相手
位置・所有者測量図、境界の資料、登記の資料不動産会社(売主側)
高さ・構造・時期構造図、工事の図面、売主からの聞き取り不動産会社(売主側)
手続きの記録確認済証・検査済証、許可の記録不動産会社、役所の窓口
今の状態現地での目視、専門家による確認住宅会社、建築士

法令では、高低差と擁壁はどう扱われているか

関係する主なルールの概要を紹介します。個別の土地にどう当てはまるかは、敷地の状況と自治体によって変わるため、数字だけで自己判断しないようにしてください(法令・条例は2026年10月6日に確認した内容です。最新の内容は各公式ページでご確認ください)。

建築基準法:敷地の安全と、擁壁を造るときの手続き

建築基準法は、建築物ががけ崩れなどによる被害を受けるおそれのある場合に、擁壁の設置など安全上適当な措置を講じることを求めています(第19条第4項)。

また、高さが2mを超える擁壁は、新しく造るときに建築確認の手続きの対象になる工作物として定められています(建築基準法施行令第138条第1項第5号)。

ただし、これは「2mを超えるかどうかで、すべてが決まる」という意味ではありません。高さの測り方は敷地の状況によって変わりますし、2m以下の擁壁でも、次に紹介する別のルールの対象になる場合があります。手続きの対象でないことと、安全であることは別の話です。

盛土規制法:盛土や切土に許可が必要な場合がある

宅地造成及び特定盛土等規制法(通称「盛土規制法」)は、盛土などによる災害を防ぐための法律です。この法律の規制区域内では、工事の規模などによって、着手する前に許可が必要になる場合があります。

栃木・群馬・茨城でも、盛土規制法に基づく規制区域が指定されています。中核市などでは、市が区域を指定・運用している場合があるため、土地の所在地ごとに最新の情報を確認してください(2026年10月6日に各県と水戸市の公式ページで確認)。

がけの近くに建てるときの条例は、自治体ごとに異なる

がけの近くに建築する場合の制限は、自治体の条例で定められています。一般に「がけ条例」と呼ばれるものです。確認例として、北関東の3県を挙げます。

  • 栃木県:栃木県建築基準条例(第6条)に、がけの付近に建築する場合の定めがあります
  • 群馬県:群馬県建築基準法施行条例(第5条)に、がけ付近の建築物についての定めがあります
  • 茨城県:茨城県建築基準条例(第5条)に、がけの近くに建築する場合や、がけの上の敷地の排水についての定めがあります

いずれも、がけの近くに建築する場合に、擁壁の設置などを求める内容です。ただし、対象になる範囲や、適用されない場合の条件は、条例ごとに書き方が異なります。県とは別に、市が独自の基準や窓口を設けている場合もあります。

がけや擁壁に関する基準は自治体ごとに異なるため、購入を検討している土地がある自治体の窓口で確認する必要があります。個別の土地に当てはまるかどうかは、自治体の担当窓口と、住宅会社や建築士に確認してください。

図面や現地だけでは判断できないこと

実務では、販売資料に書かれている内容と、建築に影響するかどうかは、分けて考えます。販売資料と現地を見ても、次のことは通常分かりません。

  • 今ある擁壁を前提に、希望の建物を建てられるか
  • 擁壁の内部や基礎がどうなっているか
  • 過去にどのような手続きを経て造られたか
  • 隣地にある擁壁が、自分の建築計画にどう関係するか
  • 擁壁の背後の地盤の状態

資料(いつ、どの手続きで造られたか)と、現地(今どういう状態か)は、別の情報です。両方がそろって、専門家が判断するための材料になります。

そこでおすすめしたいのが、「分かっていること」と「まだ分かっていないこと」を分けて書き出すことです。担当者から「問題ありません」と言われた場合も、誰が、何を根拠に確認した結果なのかを聞くと、どちらに分類できるかがはっきりします。

建物の計画にどう影響するか

建物の配置と基礎

擁壁やがけの近くに建物を建てる場合、建物の位置や基礎の造り方に条件がつくことがあります。その内容は、擁壁の状態や資料の有無、自治体の基準によって変わり、一律には決まりません。希望の間取りが入るかどうかは、住宅会社に配置の案を作ってもらって確認します。

駐車場と、玄関までの動線

道路と敷地に高低差があると、駐車場を道路の高さに造るのか、敷地の高さまで車を上げるのかで計画が変わります。玄関までの階段やスロープは、毎日の暮らしやすさにも関わります。

造成が必要になる場合

建物を建てる部分を平らにする、土留め(土が流れ出ないようにする低い壁など)を設ける、といった工事が必要になる場合があります。必要かどうか、どの範囲で行うかは、建物の配置が決まらないと確定しないことが多い項目です。

雨水の流れと排水

高低差のある土地では、雨水がどこへ流れ、どこへ排水されるかを確認します。建築基準法でも、敷地には雨水や汚水を排出するための施設を設けることが求められています(第19条第3項)。上下水道やガスがどこまで引き込まれているか、追加工事が必要かを確認する方法は、土地の上下水道・ガスは引き込み済み?購入前の確認方法と担当者への質問例で解説しています。

追加費用につながりやすい条件

土地の価格が周辺より安く見える場合でも、高低差や擁壁に関係する工事まで含めると、総額の印象が変わることがあります。追加の費用につながりやすいのは、次のような条件です。

  • 擁壁を新しく造る、または今ある擁壁を補強する・造り直す
  • 盛土や切土をして、敷地の高さを変える
  • 削った土を敷地の外へ運び出す
  • 土留めや、階段・スロープを設ける
  • 排水の設備を整える
  • 地盤の補強が必要になる

この記事では、金額の目安は載せていません。擁壁や造成の費用は、高さ、長さ、構造、工事車両の入りやすさなどで大きく変わるためです。金額の目安を探すよりも、次の4点を確認しておくほうが実際の判断に役立ちます。

確認すること内容
何が費用の原因になるか上の条件のうち、この土地に当てはまるものはどれか
いつ金額が分かるか建物の配置や調査の結果が出たあとになることが多い。購入を決める前に概算を出せるかを聞く
誰に見積を依頼するか住宅会社がまとめて見積もるのか、別の工事会社へ依頼するのか
資金計画表に入っているか入っている場合はどの項目か。入っていない場合は、いつ反映されるか

工事の費用を売主と買主のどちらが負担するかは、契約の条件によって異なります。土地と建物にかかる費用の全体像は、注文住宅の諸費用は何にかかる?内訳・支払う時期と担当者への質問例で整理しています。

不動産会社・役所・住宅会社で確認すること

確認できる内容は、相手によって異なります。

不動産会社(売主側の資料)

擁壁の所有者、造られた時期、手続きの資料の有無、これまでに調査した範囲を確認します。擁壁に関して確認した内容のうち、取引上説明が必要な事項は、契約の前に行われる重要事項説明の書面でも確認します。重要事項説明での確かめ方は、重要事項説明で何を聞けばいい?契約前に読む項目と担当者への質問例を参考にしてください。

役所の窓口

がけや擁壁に関する条例・規制の有無、その土地の擁壁についての手続きの記録、盛土規制法の規制区域に入っているかどうかを確認します。建築の指導を担当する窓口や、開発・宅地造成を担当する窓口が対応していることが多いですが、窓口の名称や担当の分け方は自治体によって異なります。

住宅会社

今ある擁壁を前提に建物を配置できるか、建物以外にどのような工事が必要になりそうか、判断のために追加で必要な資料や調査は何かを確認します。

今ある擁壁を前提に建築できるかは、擁壁の資料や現況、建物の配置・基礎計画、自治体の基準などを踏まえて確認する必要があります。不動産会社の説明だけで結論にせず、購入を決める前に住宅会社や建築士にも資料と現地を確認してもらい、必要に応じて自治体の窓口にも確認してください。

現地で見ておきたいポイントの全体は、不動産会社が土地を見るときに確認する主なポイントで紹介しています。

担当者にそのまま聞ける質問

擁壁や高低差について確認するときは、「大丈夫ですか」と聞くよりも、根拠になる資料と、どこまで確認されているかを聞くと、答えを判断材料として使いやすくなります。

不動産会社に聞くこと

  • 「この擁壁は、どちらの敷地の所有物ですか?境界との位置関係は、どの資料で確認できますか?」
  • 「この擁壁が造られた時期と、そのときの手続き(建築確認や宅地造成の許可など)が分かる資料はありますか?」
  • 「擁壁の検査済証などの書類は残っていますか?残っていない場合、役所ではどこまで確認されましたか?」
  • 「道路や隣地との高低差は、どの資料で確認できますか?実際に測った数字はありますか?」
  • 「擁壁や高低差について、これまでに確認できた内容と、まだ確認できていない内容を分けて教えてください」

住宅会社に聞くこと

  • 「この擁壁を前提に、希望している建物を配置できますか?配置や基礎を検討するうえで、追加で確認することはありますか?」
  • 「今ある擁壁をそのまま使えるかどうかは、どの資料や調査があれば判断できますか?」
  • 「造成・土留め・排水など、建物以外に必要になりそうな工事はありますか?その金額は、どの段階で分かりますか?」
  • 「その工事の費用は、いまの資金計画表に入っていますか?入っていない場合、どの項目に入れる予定ですか?」

役所の窓口で聞くこと

  • 「この土地に関係する、がけや擁壁についての条例や規制はありますか?どの窓口で確認できますか?」
  • 「この擁壁について、建築確認や宅地造成の許可・検査の記録は残っていますか?」
  • 「この土地は、盛土規制法の規制区域に入っていますか?盛土や切土をする場合、どのような手続きが必要になりますか?」

返ってきた答えがあいまいだったときの聞き直し方や、資料での確かめ方は、住宅会社への質問は何を聞く?不動産会社にも使える段階別の代表質問と回答の見方で解説しています。

よくある質問

擁壁のある土地は、買わないほうがいいですか?

擁壁があるという理由だけで、避ける必要はありません。所有者、手続きの資料、今の状態、建築計画への影響を確認し、判断材料がそろうかどうかで考えます。そろわない部分が大きい場合は、追加の調査ができるかを担当者に相談してみてください。

擁壁の検査済証がない場合は、どうなりますか?

検査済証がないことは、違法や危険を意味するものではありません。ただし、安全性や建築への影響を判断する材料が不足している状態です。役所に手続きの記録が残っていないか、住宅会社がその擁壁をどう扱う見込みかを、追加で確認する必要があります。

擁壁が隣の敷地にある場合、何を確認すればいいですか?

その擁壁の所有者と、自分の建築計画にどう関係するかを確認します。隣地の擁壁は、自分の判断だけで補修や造り直しができません。建物の配置に影響するかを、住宅会社に早めに見てもらうと安心です。

高低差がどのくらいあると、擁壁や造成が必要になりますか?

一律には言えません。高低差の大きさだけでなく、土の状態、建物の位置、自治体の基準によって変わります。数字だけで判断せず、自治体の窓口と、住宅会社や建築士に確認してください。

まとめ

擁壁や高低差のある土地は、それだけで良い・悪いを決められるものではありません。購入を決める前に、次の順番で判断材料をそろえていきます。

  1. 高低差が、道路・隣地・敷地内のどこにあるかを確認する
  2. 擁壁の位置と所有者、造られた経緯、資料の有無、今の状態を確認する
  3. 「分かっていること」と「まだ分かっていないこと」を分けて書き出す
  4. 役所の窓口で、条例や規制、手続きの記録を確認する
  5. 住宅会社に、建物の配置と必要な工事、費用が分かる時期を確認する

土地探しの中で、何をどの順番で確認するかは注文住宅の土地探しの流れ|確認する順番と購入前のチェックポイント、土地探しを含めた家づくり全体の流れは家づくりの進め方|何から始める?段階ごとの確認点と担当者への質問例で確認できます。

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