重要事項説明の日が決まったものの、分厚い書面を前に、どこを見て何を聞けばいいのか分からない。説明を聞いても、専門用語が多くて質問が浮かばないまま終わってしまいそう。重要事項説明は、こうした「聞けない」が起きやすい場面です。
結論からお伝えすると、重要事項説明書は、法律で説明が求められている項目を中心に、不動産会社が調べて確認した内容をまとめた書面です。当日の説明だけで理解しようとせず、事前に写しを読み、「追加で確認したい箇所」に印を付けておくと、聞くべきことがはっきりします。
契約から引き渡しまでの全体の流れは不動産の売買契約の流れ|契約から引き渡しまでの確認点と質問例で整理しました。この記事では、その中の重要事項説明に絞って、書面のどこを重点的に読むか、どんな書き方を追加確認のサインとして受け止めるか、担当者にどう聞けばいいか、説明を受けても判断できないときにどうするかを解説します。
重要事項説明とは(要点)
重要事項説明とは、宅地建物取引業者(不動産会社)が取引に関わる場合に、売買契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士が重要事項説明書を交付して、物件や取引条件に関する重要な事項を説明するものです(宅地建物取引業法第35条第1項)。
- 説明のときには、宅地建物取引士が宅地建物取引士証を提示することとされています(同条第4項)
- 重要事項説明書には、宅地建物取引士が記名することとされています(同条第5項)
- 書面の交付に代えて、買主などの承諾を得たうえで、電子的な方法で提供されることもあります(同条第8項)
売買取引でも、国土交通省のマニュアルに沿って、オンラインで重要事項説明が行われる場合があります(国土交通省は2021年3月から売買取引での本格運用を開始)。対面でもオンラインでも、重要事項説明書の内容を確認できる状態で説明を受けることが大切です。
重要事項説明書は事前に読む:見る順番

重要事項説明の当日は、書面を読み上げる形で進むことが多く、初めて読む状態では質問のタイミングをつかみにくいものです。契約日が決まったら、書面の写しを事前にもらえるかを担当者に相談してみてください。事前に読むときは、次の順番で見ていくと、聞くべきことを整理しやすくなります。
1. 特記事項・備考欄から読む
書面の後半にある特記事項や備考の欄には、その物件ならではの条件や、買主が了承する内容として書かれている事項がまとまっていることがあります。項目ごとの欄に書ききれない情報がここに集まるため、最初に目を通しておくと全体の見通しがよくなります。
2. 「不明」「調査中」「別途協議」などの書き方に印を付ける
書面の中には、「不明」「調査中」「別途協議」「買主負担」「現況有姿」といった書き方が出てくることがあります。これらは、それ自体が問題を意味するものではありません。具体的な意味、範囲、負担する人、調査の状況を追加で確認するサインとして、印を付けておきましょう。
3. 金額と期限が書かれた箇所を拾う
売買代金以外に支払う金銭、違約金、手付金の保全措置、住宅ローンが成立しなかったときの措置など、お金と期限に関わる箇所を拾っておきます。後から「知らなかった」となりやすいのは、金額そのものよりも、支払いの時期や条件です。
項目ごとに確認すること(土地の購入を中心に)
宅地建物取引業法第35条第1項では、重要事項説明で説明する項目が定められています。ここでは、土地を購入する場合に特に確認しておきたい項目を取り上げます。項目の名称や並び方は、書面によって異なる場合があります。
登記された権利(所有者・抵当権など)
登記されている権利の種類と内容、登記上の所有者が説明されます。売主と登記上の所有者が一致しているか、抵当権(住宅ローンなどの担保として設定される権利)などが付いている場合に、引き渡しまでにどう扱われるかを確認します。
法令上の制限(用途地域・建ぺい率・容積率など)
都市計画法や建築基準法などの法令による制限が説明されます。販売図面で見た内容と一致しているか、希望する建物の計画に影響しそうな制限がないかを確認します。販売図面との見比べ方は土地の販売図面の見方で解説しています。
道路と私道に関する負担
前面道路の種類や幅、接道の状況、私道に関する負担などが説明されます。道路の種類がどの資料をもとに書かれているか、私道の持分や通行・掘削の承諾がどう扱われているかは、書面だけでは読み取りにくいことがあります。道路の確認方法は接道と私道の確認方法で詳しく解説しています。
飲用水・電気・ガス・排水の施設
上下水道やガスなどの施設の整備状況が説明されます。整備されていない場合は、整備の見通しや、整備のための特別な負担についても説明されます。「整備の見通し」や「特別の負担」と書かれている部分は、いつ、誰が、どのくらい負担するのかを具体的に確認しておきたい箇所です。
この記事では、重要事項説明書のこの欄に何が書かれているかを扱っています。上下水道やガスそのものがどこまで引き込まれているか、追加工事が必要かを確認する方法は、土地の上下水道・ガスは引き込み済み?購入前の確認方法と担当者への質問例で解説しています。
災害に関する区域・ハザードマップ上の位置
土地の売買では、造成宅地防災区域、土砂災害警戒区域、津波災害警戒区域に入っているかどうか、市町村が提供する水害ハザードマップに土地の位置が表示されている場合のその所在地などが説明の対象になっています(宅地建物取引業法施行規則第16条の4の3)。
区域に入っているかどうかだけでなく、どの資料の、いつ時点の情報をもとに説明しているかも確認しておくと安心です。ハザードマップは自治体のサイトで公開されているため、重要事項説明の前に自分でも見ておくと、当日の説明が理解しやすくなります。
売買代金以外に授受される金銭
手付金など、売買代金以外にやり取りする金銭の額と目的が説明されます。何のために、いつ支払うお金なのかを、一つずつ確認しておきましょう。
契約の解除・違約金・手付金等の保全措置
契約を解除できる場合の条件、損害賠償額の予定や違約金、手付金などを受け取る場合の保全措置の概要などが説明されます。解除の条件と違約金は、契約を結んだ後に「戻りにくくなる」理由に直結する項目です。手付解除やローン特約の考え方は、不動産の売買契約の流れで整理しています。
住宅ローンのあっせんと、成立しないときの措置
不動産会社が住宅ローンなどのあっせんをする場合、その内容と、ローンが成立しなかったときの措置が説明されます。契約書のローン特約とあわせて、期限や対象となる金融機関が一致しているかを確認します。予算の考え方は住宅ローンの予算はいくらが適正?「借りられる額」と「無理なく返せる額」の違いで解説しています。

契約不適合責任の履行に関する措置
引き渡された物件が、種類や品質の点で契約の内容に適合しない場合の責任について、保証保険などの措置を講じるかどうかと、その概要が説明されます。措置がない場合もあるため、「ない」と書かれている場合も含めて、契約書の契約不適合責任の期間や範囲とあわせて確認します。
読んでも判断しにくい書き方と、実務側の見方
重要事項説明書には、読んでも良し悪しを判断しにくい書き方があります。実務では、こうした書き方は「その時点で分かっていること・決まっていること」を正確に書いた結果であることが多く、それ自体が問題を意味するとは限りません。大切なのは、具体的な意味・範囲・負担・調査の状況を追加で確認することです。
| 書き方の例 | 追加で確認したいこと |
|---|---|
| 不明・調査中 | 何を調べて分からなかったのか。契約日までに確認できる見込みはあるか |
| 別途協議 | 誰と誰が、いつまでに、何について協議するのか |
| 買主負担 | 何の費用・手続きを、どの範囲まで買主が負担するのか |
| 現況有姿(現在の状態のまま引き渡すこと) | 引き渡すときの状態として、何が含まれ、何が含まれないのか |
| 整備の見通し・特別の負担 | いつ整備される予定か。費用や手続きは誰が負担するのか |
重要事項説明の内容は、不動産会社が調べた時点の情報です。どの資料をもとに、いつ調べた内容なのかを聞くと、どこまで確認できているのかが分かり、自分で追加して調べるべき点も見えてきます。
当日、説明を聞くときのポイント
当日は、事前に印を付けた箇所を手元に置いて説明を聞きます。分からない言葉が出てきたら、その場で説明を止めて質問してかまいません。確認のための質問は、住宅購入では珍しいことではありません。
説明を受けても判断できない点が残った場合は、その場で結論を出す必要はありません。次のような対応が考えられます。

- 回答を書面やメールで残してもらう
- 追加で調べてもらう事項と、回答の期限を決める
- 家族と相談する時間が必要な場合は、契約日を改められるか相談する
- 法的な判断や技術的な判断が必要な内容は、弁護士や建築士などの専門家に相談する
重要事項説明を受けたことの確認として、買主に署名などを求められる場合があります。ただし、重要事項説明を受けたことと、売買契約が成立することは別です。内容を理解したうえで手続きを進めましょう。
担当者にそのまま聞ける質問
重要事項説明の前後で、次の質問をそのまま使って担当者に聞いてみてください。
書面全体について
- 「『不明』『調査中』と書かれている項目は、契約日までに確認できますか?」
- 「特記事項や備考に書かれている内容のうち、買主が了承することになるのはどれですか?」
権利・法令・道路について
- 「抵当権などの登記は、決済日までに抹消される予定ですか?」
- 「法令上の制限のうち、希望している建物の計画に影響しそうなものはありますか?」
- 「私道の負担や通行・掘削の承諾について、書面のどこに、どの資料をもとに書かれていますか?」
設備・災害について
- 「『整備の見通し』や『特別の負担』と書かれている部分は、いつ、誰が、どのくらい負担することになりますか?」
- 「災害に関する区域やハザードマップの説明は、どの資料をもとにしていますか?」
お金と解除について
- 「売買代金以外に、この取引で支払う金銭は何がありますか?」
- 「契約を解除できるのはどのような場合で、違約金はどのように決まりますか?」
- 「住宅ローンが成立しなかった場合の措置は、この書面ではどう書かれていますか?」
- 「契約不適合責任の期間と、保証保険などの措置の有無を教えてください」
判断できないときに
- 「説明を聞いて判断できない点があった場合、契約日を改めることはできますか?」
返答があいまいだったときの聞き直し方や、資料での確かめ方は、住宅会社への質問は何を聞く?不動産会社にも使える段階別の代表質問と回答の見方で解説しています。
よくある質問
重要事項説明を受けたら、契約しなければいけませんか?
重要事項説明は、契約を結ぶかどうかを判断するための説明です。説明を受けたことで契約が成立するわけではありません。判断できない点が残っている場合は、確認が済むまで契約の手続きを進めないことも選択肢の一つです。
重要事項説明書は、電子データで受け取れますか?
買主などの承諾がある場合には、書面に代えて電子的な方法で提供されることがあります(宅地建物取引業法第35条第8項)。紙で受け取りたい場合や、電子での受け取りに不安がある場合は、事前に担当者に伝えておきましょう。
建物の工事請負契約にも重要事項説明はありますか?
宅地建物取引業法による重要事項説明は、土地や建物の売買などの取引が対象です。住宅会社と結ぶ建物の工事請負契約では、見積書・図面・仕様書・契約約款などで内容を確認することになります。
マンションを購入する場合は、説明される項目が変わりますか?
マンション(区分所有建物)の場合は、敷地に関する権利や管理に関する事項なども説明の対象に加わります。この記事では、土地の購入を中心に解説しています。
まとめ
重要事項説明書は、法律で説明が求められている項目を中心に、不動産会社が調べて確認した内容をまとめた書面です。特記事項・備考、「不明」「調査中」「別途協議」などの書き方、金額と期限が書かれた箇所に印を付けて事前に読むと、当日に聞くべきことがはっきりします。
気になる書き方は、それ自体を問題と決めつけず、意味・範囲・負担・調査の状況を追加で確認するサインとして受け止めてください。判断できない点が残った場合は、回答を書面で残してもらう、契約日を改められるか相談するなど、その場で結論を急がない方法があります。
まず取りかかるとすれば、契約日が決まった段階で「重要事項説明書の写しを事前にいただけますか?」と担当者に相談してみてください。
土地探しの注意点は土地探しで失敗しないための条件の絞り方と注意点、家づくり全体の流れは家づくりの進め方|何から始める?段階ごとの確認点と担当者への質問例で整理しています。
この記事は、不動産会社での売買・賃貸の実務経験と、宅地建物取引業法・同法施行規則の条文(e-Gov法令検索で2026年10月1日に確認)、国土交通省の公表資料をもとに、宅地建物取引士として契約や重要事項説明で確認すべきポイントも踏まえて執筆しています。法令や運用は変わることがあり、個別の取引によって扱いが異なります。判断に迷う場合は、担当者や専門家にご確認ください。